Reapra Book ver2 (2022) - はじめての社会と共創する熟達
リープラブック バージョン2 (2022)
はじめに
Reapra(リープラ)Book Ver2を手に取っていただきありがとうございます。
このBookには、社会と共創する熟達を通じて次世代の産業創造を目指す私たちが、これまでの研究実践から見えてきた「産業創造への歩み」をまとめています。
私たちは、Venture Capitalという事業形態を取りながらも、Venture Builder(ベンチャービルダー)を自称し、「いかにして次世代の産業をつくるか」というテーマを起業家と共に探求しています。そして、これまでの探求の中から見えてきた「社会と共創する熟達1」というあり方を軸にこのBookを執筆しています。その「社会と共創する熟達」は、起業家のみならず、多くの方にとって興味を持てる概念なのではないかと考えています。その意味で、このBookは、現在の起業家および未来の起業家をメインの読者として想定していますが、それ以外の方にも手にとっていただけると嬉しいです。
1. 「社会と共創する熟達」とは、については本書で詳しく説明させてください。 ↩
早いもので、2020年から取り組み始めた「Book」を作るというプロジェクトも2年目となりました。今年も「Ver2」という形で私たちの取り組みの一部をお届けできることを嬉しく思います。Book Ver1では、自分たちの取り組みを「Book」という形で外部に出す初めての試みでした。メンバー全員で一般化しながら読みものに落とし込んでいくのは、思ったよりも困難が伴いました。なんとか1つの読みものとして体裁を整えることはできましたが、ページ数がなんと350ページ超えの長編大作となり、「読むのに気合がいる」「難しくて読みきれない」などの声をいただくことになりました。読みにくい文章をなんとか読んで、示唆に富んだ感想も多くいただきましたが、文量の多さに加えて、文章の難しさや書き方の独特さが、そもそも読んでもらうことのハードルを作ってしまったのが大きな反省点でした。
こうしたVer1での反省を踏まえ、Ver2の制作に当たってはあたらめてBookの存在意義から問い直し、新たにMissionとして策定しました。その存在意義たるBookのMissionは「次世代の産業創造に向けて社会と共創する熟達を歩む人たちのエコシステム構築/創発/創造の媒介としてBookが機能している」です。言い換えるなら、社会と共創する熟達に共感しともに歩んでくれる方々と集い、憩い、学び合う場の起点としてBookを創っていきたいということです。例えば、Bookの内容をディスカッションする読書会ができたり、Bookの内容を実践するチームができたり、内容そのものを共に執筆したり。読者のみなさんは社会と共創する熟達ってなんだろうと関心を持ち始めたばかりの方から、既に歩み始めている方までさまざまな状態だと思います。こうした多様な段階の方々との共同学習の媒介としてBookを進化させていくべく、その通過点としてVer2は執筆されています。
Ver1からの大きなアップデートとしては、Reapra社員それぞれが社会と共創する熟達を歩む中での記録を掲載していることが挙げられます。社会と共創する熟達の実践例として、Ver1では第5章にて起業家のインタビューを掲載しました。産業創造に日々向き合う起業家の皆さんの経験を記述したこのパートは、読み進めるのが難しいと言われたVer1の中でも比較的多くの方に読んでいただきました。同様に多くの読者の方から好評をいただいたのは、第3章のReapra社員山田の葛藤についての文章でした。起業家とReapra社員という立場は違うもの、社会と共創する熟達を歩むリアルを垣間見ることができ、興味深かったと感想をいただいています。それならばと今回のVer2では起業家が事業において経験する葛藤はもちろん、Reapra社員自身がどのように社会と共創する熟達に向き合っているかもお伝えできるように制作しています。これらの内容は社会と共創する熟達の実践例として第3部にまとめて収録しております。
以上を踏まえて、本章に入っていく前に、3つお願いがあります。
一つ目は、自分に引き付けて考えながら読んでいただきたいということ。
人は多くの理論やストーリーを、自分の外部のもの、自分とは違うものとして受け取りがちです。今回のこの本も「そうなんだ、なるほどそう考えるのね」とさらりと読んでしまえるとも思います。だからこそ、折に触れて立ち止まり「自分に置き換えて考えるとどうなのだろう」「私はこの部分をどう考えているのだろう」と考えてみて欲しいのです。起業家やReapra社員の実践例を載せた第3部は、このような思考の手助けとしても使えるのではないかと思っています。そうすることによって出てきた疑問や意見を、ぜひ私たちに投げかけてください。人によっては「こんなこと聞いていいのか?」と不安になる方もいらっしゃると思いますが、投げかけを通じて皆さんと対話が始まり、緩やかなつながりが広がると嬉しいです。
二つ目は、実践に紐づけて読んでいただきたいということ。
ここに書かれていることの多くは、Reapra社内のメンバーや起業家の実践を通して作られたものです。しかし、実践を一般化したといっても、理想論のように聞こえてしまう部分もあると自覚しています。だからこそ「机上の空論だ」「言うのは簡単だ」と処理せず、そう思った部分こそ実践をしてみて欲しいです。多くの方の実践をサポートするのに十分な内容になっているとは言い難い部分もあります。そんなときは、繰り返しになりますが、私たちにお問合せください。なお、本書において社会と共創する熟達の具体実践例は第7章にてご覧いただけますので、そちらからお読み頂いても構いません。
三つ目は、批判的な姿勢で読んでいただきたいということ。
私たちの実践が全ての場合に正であるとも、適用可能だとも考えてはいません。しかし、一部のごく限られた人にしか適用できないとも考えてはいません。すべての人にとって良いものとするつもりはないですが、多くの人にとって良いものなのではと考えています。とはいっても、まだまだ探求する必要のある概念です。考えたりない部分もあるし、無意識の固定概念が反映されている部分もあるかもしれません。だからこそ、自分に引き付けて読んでいただきつつ、批判的に「本当にそうなのか?」と疑う視点を忘れずに読んでいただきたいのです。何度も繰り返してしまいますが、そんな批判的意見こそが探求を進めることにつながると考えているので、ぜひ私たちに批判コメントを投げかけてください。もし、この概念を一緒に作っていく、深めていくことに興味がある方がいたらメールやチャットbotなどからいつでもお声がけください。産業創造に向けて社会と共創する熟達を歩む人たちのエコシステム構築/創発/創造の媒介としてBookを共に創っていけると嬉しいです。
それでは、社会と共創する熟達の探究のたびに一緒に出かけましょう!
本書の構成
本書は、三部に分けて構成されています。
構成について話す前に、前提となっている社会と共創する熟達と産業創造との関係について整理させてください。私たちが掲げている社会と共創する熟達は、産業創造をするしないにかかわらず、世代を跨ぐ社会課題を解決しようとする主体に広く適用できるものだと考えています。その中で、私たちは株式会社というアプローチを通して、その実践を進めようとしています。もう少し説明すると、私たちは株式会社を通して、時代を超えた形で、社会性を含んで、らしさを入れていきながら、今の競争環境で勝ち続けながらも意図的に時間軸を取り込んで徐々に包容力を上げていきながら産業創造をしていくことを目指しているのです。
第1部では、上述した「社会と共創する熟達」の理解を深めるために、その簡単な定義を説明し、「社会と共創する熟達」のよって立つところとなっている「環境と自我の相互作用」という観点からこの概念を紹介します。
その後続く第2部では、株式会社アプローチにおける、社会と共創する熟達を歩むステップを紹介します。前半ではファウンデーションデザイン(FD)
最後の第3部では、社会と共創する熟達を歩む社員と起業家の具体事例を紹介します。
第1部を読んでいただきありがとうございました!自分の理解度や疑問点の整理ができるアンケートをご用意しておりますので、よろしければお使いください。 メールでのフィードバックは book-feedback@reapra.sg まで。